シンガポールの国民食のひとつとして知られるチキンライス。やわらかく茹でたチキンをひと口大にスライスして、香り豊かな味付きのライスと一緒にいただきます。濃い色の醤油、ガーリックチリ、そして生姜のソースが添えられます。

シンガポール人は食べることが大好き。多くのシェフたちがさまざまなアレンジをこの伝統料理に加えて、新たなチキンライスを生み出してきました。そしてそれが、「モッド・シン」(モダン・シンガポール料理)と呼ばれる新たなカテゴリーの誕生へとつながってきたのです。

伝統的な海南チキンライスは、海南島の人々が食べていた「ウェンチャン・チキン」と呼ばれる料理をアレンジして生み出されたものです。ウェンチャン・チキンには、骨と筋の多い特別な鶏が使われます。シンガポールでは、地元の広東人たちの味覚を取り入れて、ピリ辛の赤唐辛子ソースを効かせ、柔らかい若鶏を使います。

ライスだけでもボリュームたっぷりで、やわらかなチキンとよく合います。チキンストックと鶏の脂肪で炊いたお米はうまみたっぷりで、生姜とパンダンの香りが食欲を誘います。

他にもチキンライスは幅広いバラエティがあります。ほとんどのレストランで、蒸し鶏とローストチキンのどちらかを選ぶことができます。屋台ではソヤソース・チキンライスというメニューもあります。これは、茹でたチキンを醤油で煮たもので、濃い色が特徴です。

チキンライスのクローズアップ写真

蒸し鶏
ティエン・ティエン・ハイナニーズ・チキンライスのチキンライス

伝統的なチキンライスの食べ方。鶏肉を完全に火が通るまで茹でた後、冷水に浸して柔らかく仕上げます。

マックスウェル・フード・センターにあるホーカー屋台のティエン・ティエン・チキンライスは、シンガポールを代表する伝統料理であるチキンライスの地位向上に貢献してきた有名店です。屋台の料理人、マダム・フー・クイ・リアンは、テレビの料理対決のシリーズ番組『ホーカー・ヒーロー・チャレンジ』の中で、英国人のセレブシェフ、ゴードン・ラムゼイに勝利したことがあります。

たったの3.50シンガポールドルで、たっぷりのチキンとライス、それにスープまでついてきます。

ティエン・ティエン・チキンライス(マックスウェル・フード・センター) 1 Kadayanallur Street #01-10/11, Singapore 069184 +65 9691 4852
火曜日~日曜日 午前10時~午後7時30分

チキンライスをヘルシーにアレンジしたのが、アッパー・トムソンにあるチキン・ハウス。名物の鶏をまるごと1羽使った「カンポン」・チキン(カンポンはマレー語で「村」)は28シンガポールドル。このお店の鶏は、マレーシアの田舎で育てられている地鶏を使用。トウモロコシを餌にして平場で放し飼いにすることで、引き締まった体型の、黄色い皮の鶏になります。

やわらかな鶏肉を、特製のガーリックチリソースや生姜ソースにつけて食べれば、さらに味にパンチが加わります。全ての料理に、24時間以上かけて煮込んだ自家製の味わい豊かなチキンスープがついてきます。食材がなくなり次第閉店してしまうので、来てみたらもう閉まってた、なんてことのないように、早めのランチをおすすめします。

チキン・ハウス 255 Upper Thomson Rd, Singapore 574382 +65 6440 0108
毎日 午前10時30分~午後9時


ローストチキン
ロイ・キーのチキンライス

このチキンライスは蒸し鶏を使った伝統的なチキンライスをベースにしていますが、こんがりパリパリの皮が特徴です。生姜汁と醤油、蜂蜜、塩と胡椒の漬け汁に漬け込んでからローストしているのです。

バレスティア・ロードにあるロイ・キーは、地元の人々に人気のお店です。新鮮なチキンのローストが熱々のライスとよく合います。パリパリの鶏皮とやわらかい肉の味わいが楽しめます。一人前6.50シンガポールドルから。ロイ・キーでは、海南ビーフシチューやチャーシュー(味つけして焼いた豚肉)なども人気です。

Loy Kee Chicken Rice 342 Balestier Road, Singapore 329774. +65 6252 2318
毎日 午前10時~午後10時


醤油

ソヤソース・チキンは蒸し鶏に似ていますが、違うのは醤油と各種ハーブや香辛料を混ぜたものを使った漬け汁で鶏肉を蒸し煮にしているというところ。これにより、独特な色と味わいが生まれます。2016年、屋台の店主チャン・ホン・メンのソヤソース・チキンライスがミシュランの1つ星を獲得しました。屋台でミシュランの星を獲得したのは、世界でもここの他には1店しかありません。

1号店はチャイナタウン・コンプレックスの2階にあります。でも、ここで食べようと思ったら行列に並ぶことは覚悟しておきましょう。ミシュランの星を獲得して以来、その味を確かめようと、遠方からもたくさんの人々が押し寄せるようになりました。でも、待ってでも食べる価値のある味であることは保証できます。醤油ベースのタレで蒸し煮にしたやわらかな鶏皮は、いくらでも食べられるおいしさ。ソヤソース・チキンライスは一人前2.80シンガポールドル。麺をつけると3.30シンガポールドルです。

1号店には行くことができないという人もご安心を。ホーカー・チャンは今ではシンガポール国内はもとより、アジア太平洋地域に複数の支店を出すまでに拡大しているのです。

チャイナタウン・コンプレックス・マーケット&フード・センター。335 Smith Street #02-126, Singapore 050335.
月曜日~土曜日 午前10時30分~午後3時30分


モッド・シン
ラビリンスの「アンモ」チキンライス

モッド・シンとは「モダン・シンガポール料理」のこと。シンガポールの伝統料理を現代的なアレンジとテクニックで再構成した料理のことを指します。

ラビリンスのオーナーシェフのハン・リ・ガンは、伝統的なシンガポール料理をクリエイティブにアレンジすることで評価されてきました。ディナーの時間に行って、土鍋で出される「アンモ」チキンライスをぜひお試しください。地元産のキノコとカンポンチキン、昔ながらのチリソースで作った逸品です。

ラビリンス 8 Raffles Avenue #02-23, Singapore 039802 +65 6223 4098
火曜日~金曜日 正午~午後2時30分、午後6時30分~午後11時、土曜日・日曜日 午後6時~午後11時